【経験談】娘のぜんそくは「家」が原因でした。気づきから得た、健康に暮らせる家づくりとは。
2025.8.6
アレルギー対策

もしかして、あなたの家も?お子さんのぜんそく、その原因は住まいにあるかもしれません。
「うちの子のぜんそく、咳、何が原因なんだろう…」
「いくら病院に通っても改善しない…」
お子さんのぜんそくに悩むお母さんへ。もしかしたら、その咳やぜんそくなどのアレルギーの原因は、毎日過ごしている「住まい」にあるのかもしれません。
今回は、長年住宅建築に携わり、ご自身の娘さんのぜんそく発症をきっかけに「空気のきれいな家」づくりに尽力されている、株式会社ダイワ住研代表取締役の和田隆之(わだ たかゆき)社長にお話を伺いました。
45年にわたり約2,500件もの工事を手がけてきた経験豊富な和田社長が語る、実体験に基づいたぜんそく改善への道のりと、健康な住まいづくりで和田社長がたどり着いた結論をご紹介します。
このお話が、お子さんのぜんそく解決の糸口となることを願っています。
第1章:わが家の建て替えと、突然のぜんそく発症
今から23年前、次世代省エネ基準が施行された1999年から3年が経った頃、和田社長はご自宅を新築(建て替え)されました。それまでの住まいでは見られなかった娘さんのぜんそく症状が、この新築をきっかけに突然現れたと言います。
「家内から聞いたんですけども、就寝時にひどく咳き込み、喉から『シューシュー』というぜんそく特有の音がするようになったんです。苦しくて寝られないので病院に連れて行くと、小児ぜんそくと診断されました」
と和田社長は当時の状況を振り返ります。和田社長の次女である成美さんだけがぜんそくを発症したことや、ご家族で気管支が一番弱い娘さんに症状が出たことから、そのときは体質が原因だと考えていました。
当時の和田社長は「断熱性ばかりを追求した家が必ずしも健康的ではない」という考えには至っておらず、まさか新築したばかりの家がぜんそくの原因になるとは夢にも思わなかったそうです。
第2章:断熱性能の落とし穴!「高気密住宅」がぜんそくを引き起こした「なぜ」
では、なぜ新築の家でぜんそくが発症してしまったのでしょうか。
和田社長は、その原因が当時の「外張り断熱仕様」にあると語ります。
「新築時に外張り断熱を採用したことで、家の気密性は格段に向上しました。ところが、気密性が高まったにもかかわらず、計画的な換気が十分に行われていなかったんです。その結果、室外と室内の温度差からひどい結露が発生し、カビが生えてしまいました。そして、そのカビをエサにしてアレルゲンとなるダニが大量に繁殖し、それが気管支の強くない次女のぜんそく発症に直結してしまったメカニズムに、後から気づきました」
当時の心境について、和田社長は「恥ずかしい話ですが、当時は目の前の仕事に時間を取られ、子育てを家内に任せっきりでした。正直な話、まさか家がぜんそくの原因だとは考えてもいませんでした。お医者さんも、それがダニであるとかアレルゲンであるとかは言ってくれませんでしたし、もともと私自身も気管支が強くない方なので、娘も私と同じように気管支が弱く、体質的なものからだと思っていましたね」と、正直な想いを打ち明けてくださいました。
この経験は、住宅の専門家である和田社長にとっても大きな「気づき」のきっかけとなったのです。
第3章:試行錯誤の末に見えた光!ぜんそく改善への道のり「どのように」
ー娘さんのぜんそく発症後、和田社長のご家族はどのような対策を講じたのでしょうか。
「娘は病院で通院し、投薬治療を受けました。しかし、それだけではなかなか症状は改善せず、正直なところ、劇的な効果は感じられませんでした」
転機となったのは、ハウスメーカーの業務請負をされていた和田社長が、直接エンドユーザであるお客さまに住宅を提供したいという思いから家について研究する中で、高気密・高断熱住宅における換気の重要性について深く学び始めたことでした。
「自社の新築、リフォーム事業を充実させたいと考え、サッシメーカーのセミナーなどに参加するようになりました。そこで、高気密住宅において換気がどれほど重要かを知り、それがアレルゲン、特にダニの繁殖と密接に関係していることに気づいたんです。実は、自宅には元々換気扇が設置されていたのですが、使い方がわからず、照明器具と同じように電源を切ってしまっていたため、効果を発揮していませんでした」
この気づきを機に、和田社長は各居室の換気扇のスイッチを切らずに、その正しい使い方を徹底するようになります。投薬治療と住環境改善の併用によって、娘さんのぜんそくは徐々に改善していったそうです。
「小学校の高学年、6年生になる頃には、症状が緩和し、ほとんど気にならなくなりました。体力がついてきたことも大きいですが、住環境を改善したことが症状の緩和につながったと実感しています」
第4章:専門家がたどり着いた結論!健康な住まいの「気づき」
和田社長は自身の経験と長年の研究から、現代の住宅における「換気」の重要性を力説します。
「現在の住宅は、冬の寒さや省エネ対策として、断熱性や気密性が非常に高くなっています。これは一見良いことのように思えますが、実は、アレルゲンとなるダニが繁殖しやすい室内環境を作り出してしまうという落とし穴があるんです。人も快適な環境は、ダニにとっても快適な環境。だからこそ、ダニの繁殖率は非常に高まります」
では、そのような室内環境を改善するためには何が重要なのでしょうか。和田社長は「何よりも『換気』が重要です」と断言します。
しかし、ただ換気扇を回せばいいというわけではありません。
「気密性の低い住宅で換気扇を稼働させると、冬は室内の熱を放出し、夏は室内の冷気を放出し、大きなエネルギー損失につながってしまいます。これではせっかくの断熱性能が無駄になってしまいます。そのため、理想的な環境とは、『気密性の高さ』と『計画換気』がセットで実現されていることです」
そして、具体的な数値と設備についても言及してくださいました。
「私たちが推奨しているのは、屋内の気密度が0.5㎠/㎡以下であること。そして、熱交換型同時吸排気換気扇の設置です。気密性が低いと、コンセントやスイッチ周り、床と壁の隙間など、あらゆる場所から空気が漏れてしまい、換気扇の効力が落ちてしまいます。また、昔の建物では、床下や壁の中に黒カビが生えていることが非常に多く、気密性が低いと換気によってこのカビの胞子が室内に大量に入り込む可能性が高いんです。熱交換型同時吸排気換気扇は、排気する空気から熱を回収し、給気する空気に熱を与えることで、エネルギー損失を抑えつつ、効率的に換気を行うことができます。これにより、室内の汚染された空気を効果的に排出することが可能になります」
和田社長は、ぜんそく以外にも、室内の空気環境が家族の健康に与える影響についても言及しました。
「床下や壁の内部に生える黒カビの胞子は、過敏性肺炎や、男性に発症確率が高いと言われる間質性肺炎につながる可能性もあります。現に、お客様の中には、長年換気扇を回していなかったために間質性肺炎を発症されたご主人がいらっしゃいました。換気扇を常に回すことをアドバイスしたところ、症状が改善したというお声もいただいています」
ーハウスダストやカビ以外に、ぜんそくの原因となるアレルゲンとして住宅内で特に注意すべきものはありますか? 例えば、ペットのフケや花粉の侵入などについてはいかがでしょうか?
「今おっしゃられたペットのフケや花粉を含め、生活していると、まあホコリが絶対に発生するんです。そのホコリっていうのが、結局は床上に落ちるのと、棚やものの置いているものの上にたまりますのでね。いかにその辺のホコリを手軽にお掃除できる工夫をする。まあ、例えば、物は収納の中に収めるようにするとか。つまり、表面に出ているものを極力少なくする。そして、ダスキンさんのモップやハンドモップなど、床を掃除するクイックルワイパーみたいなもので簡単に、朝起きた時に掃除できるような工夫をしておくと、働く主婦の方の負担が減りますから、現実的に実行できるようになるかなと思います。
ー空気清浄機や加湿器、除湿器などの家電は、ぜんそく対策においてどの程度効果的だと思われますか?
「私の中ではあんまり効果がないように思います。空気清浄機はフィルター自体にホコリは溜まっていくので、効果があるように思えますが、物は収納に入れて、床面を簡単にこまめに掃除するほうが効果が高いと考えています。加湿器は冬場に使いますが、シーズンに入る前のメンテナンス、お掃除が一番重要です。カビが生えることがありますし、水タンクのなかも掃除をしてください。除湿は夏場のエアコンが一番効果的なので、内部クリーン機能を使ったりして、4年に1回を目途にエアコンクリーニングをしてメンテナンスをお願いします。一年間を通して、室内の空気を循環させるには、サーキュレーターがおススメです」
第5章:お子さんの健康を守るために!お母さんに伝えたい住まい選びのポイント
和田社長は、お子さんの健康を守るために、親御さん自身が住まいについて深く考えることの重要性を強調します。
「現代の住宅は、冬の寒さや省エネ対策として断熱性能が厳しく規制されるようになりました。しかし、この変化がアレルゲンを発生させやすい屋内環境につながっていることを知ってほしいのです。子どものぜんそくの約90%がアレルギー体質であり、その中でもダニアレルギーが多いと言われています。だからこそ、住まい選びは非常に重要なのです」
では、具体的にどのような点を調べるべきなのでしょうか。
ー家族が健康に暮らすための理想の住まいづくりに向けて、親御さんが特に注意して調べるべき住まいの性能や仕様は何だとお考えでしょうか?
「一番大切なのは、換気設備がどうなっているか、そしてそれをどう使うかです。多くの方がエアコンと換気扇を混同しており、『換気』という概念があまりありません。エアコンは快適に過ごすための空調設備ですが、換気扇は室内の空気を入れ替えるためのものです。エアコンのクリーニングには関心があっても、換気扇のメンテナンスにはほとんど意識が向いていないのが現状です。どれだけ良い設備をつけても、正しい使い方やメンテナンスがなされなければ意味がありません。私たち建築業者は、単に家を建てて終わりではなく、メンテナンスの仕方まで含めて、お客様が健康に快適に暮らせるようにサポートしていく必要があります」
これから家を建てる、あるいはリフォームを考えている親御さんへのメッセージとして、和田社長は次のように語ります。
ー実際に住宅を建築またはリフォームする際に健康的な住環境を実現するために、施主が工務店や設計士に質問すべきポイントがあれば教えてください。
「工務店や設計士さんに『私たちは健康的な住環境を求めています、それを実現するために抑えるポイントは何でしょうか?』と問いかけてください。合わせて『それを実現するためのコストはいくらぐらいかかるんでしょうか?』と尋ねてみてください」
ー和田社長が考える「空気のきれいな家」とはどのような家でしょうか?具体的な間取りや設計のポイントがあればお伺いしたいです。
「空気を循環しやすい間取りといえば、昔の田舎によく見られる『田の字形』の家が理想だと思います。もともと家は、夏の季節に向けて風が通り、快適に過ごせるように建てるという考えがありました。だから、冬は寒くて大変なんですが(笑)。『田の字形』の家は理にかなっていることになりますが、今の時代に暮らすとなれば部屋ごとのプライバシーが確保されませんから、壁を設置し、間仕切りの上部に開口窓を設けて空気が流れるように施工させていただいた事例があります」
和田社長が手がけた「健康に良い住まい」の事例についても伺いました。
ーこれまで約2500件の工事を手がけられた中で、和田様が特にこれは健康に良い住まいだと感じられた事例があれば、ぜひご紹介ください。
「リフォームで言うと大津市のH様ですね。賃貸マンションに住まわれていたご夫婦で、奥さまが喘息を発症され、通院先の婦人科のドクターから『奥さんのアレルギー喘息の原因は家ですよ』と伝えられ、中古住宅を購入されリノベーションしました。その建物は、ツーバイフォーでしたので、気密性、断熱性があるため換気設備を備えて活用していただき、住みはじめてから明らかに症状が改善されたので健康に良い住まいの事例になります。新築では、びわ湖ローズタウンで分譲設計させていただいた住宅は、訓令木材を使用した無垢材を使い、部屋の上部に開口を設けたり、吹き抜けの上にシーリングファン(羽根がゆっくりと回転することで、部屋の空気を循環させるもの)で空気の流れをつくりました。遮熱対策を行いましたので、結露は発生しませんし、換気設備は全館換気を備えましたので健康に過ごしていただける住宅になりました」
まとめ:諦めないで!お子さんのぜんそくは、住まいを見直すことで改善できるかもしれません
和田隆之社長の貴重な経験談を通して、高断熱・高気密住宅における「計画換気」の重要性や、それがお子さんのぜんそくに与える影響について深く学ぶことができました。
お子さんのぜんそくに悩むお母さんへ。病院での治療はもちろん大切ですが、もしかしたら、その原因は「住まい」にあるのかもしれません。和田社長は「ぜんそくの原因が家にあることを、なかなかお医者さんは言ってくれない」と語ります。だからこそ、ご自身で「何が原因なんだろう?」と疑問を持ち、信頼できる専門家に相談することが、改善への第一歩となります。
ー和田社長ご自身の経験を踏まえて、これから家を建てようと考えている方々へ最も伝えたいメッセージをお願いします。
「家は、家族が共に成長する大切な資産であり、元となる場所です。将来、子供さんたちの成長まで見据えて、じっくりと考えて、信頼できる依頼先を選んでくださいっていうのが、私からの言葉です」
ーまた、今、戸建てやマンションにお住まいの方でぜんそくを発症されている方への最も伝えたいメッセージをお願いします。
「『家が原因かもしれない』ということを知って、ご自身で家の中を調べる方法をおこなって、調査を専門の知識を持っている業者に依頼して、原因を明らかにすることができたら、必ず改善につながると思います」
株式会社ダイワ住研 代表取締役 和田隆之は、長年の経験とご自身の苦い経験から得た知見を活かし、お客様の健康と快適な暮らしを追求した住まいづくりを提案しています。「ご家族が健康に暮らせる家」への和田社長の強い想いが、この記事を通して皆様に届くことを願っています。
お子さんのぜんそくでお悩みの方は、まず、ご自身の住まいについて改めて考えてみませんか?
「うちはどうなんだろう?」と気になる方、お家の状態を一度見に来てほしい方は、お気軽にダイワ住研へご相談ください。