【家の専門家が解説】シックハウス症候群が疑われる場合の対策方法
2025.8.6
アレルギー対策

「もしかして、シックハウス症候群かも?」そう感じ始めたあなたやご家族は、その症状に不安を抱え、どのように対処すれば良いのか知りたいと思っているのではないでしょうか。本記事では、住宅のプロフェッショナルとして、シックハウス症候群の基本的な知識から、今すぐできる応急的な対策、そして根本的な解決策までをわかりやすく解説しています。
あなたやご家族の健康と快適な暮らしを取り戻すための第一歩となる内容にしていますので、ぜひお読みいただけると嬉しいです。
シックハウス症候群とは?
シックハウス症候群とは、新築やリフォーム後の住宅、あるいは既存の住宅において、建材や家具などから放散される化学物質、またはカビやダニなどが原因で、住まわれている人に様々な健康被害が生じる状態を指します。特定の病名ではなく、様々な症状の総称として使われます。シックハウス症候群は、上記のような理由が原因で引き起こされるアレルギー反応の一種です。症状の原因やアレルギーの原因となる物質や個人差によって症状の出方も異なるため、診断が難しいケースも少なくありません。
シックハウス症候群の症状
シックハウス症候群の症状は多岐にわたり、個人差が大きいのが特徴です。
代表的な症状としては、
・目や鼻、喉の刺激感(目がチカチカする、鼻水が出る、喉がイガイガするなど)、
・頭痛、めまい、吐き気、倦怠感、不眠、湿疹、
・呼吸器系の症状(咳、喘息の悪化など)、自律神経失調症
に似た症状などが挙げられます。これらの症状は、自宅にいる時に強くなり、家を離れると軽減するという特徴が見られることがあります。
シックハウス症候群の原因
シックハウス症候群の原因は一つではなく、複数の要因が複雑に絡み合って発症することがほとんどです。
化学物質の多用(住宅の建材)
住宅の建築・改修において使用される建材や内装材には、接着剤、塗料、防腐剤、防蟻剤などに含まれる様々な化学物質が使われています。特に、ホルムアルデヒドやトルエン、キシレンなどの揮発性有機化合物(VOC)が代表的で、これらが室内に放散されることで、空気中に汚染物質が蓄積され、シックハウス症候群の原因となります。
高気密住宅の普及
近年の住宅は、省エネルギー化の観点から高気密化が進んでいます。これは、外部の熱を遮断し、室内の快適な温度を保つために非常に有効な構造です。しかし、その一方で、室内の空気が外部と入れ替わりにくくなるため、建材や家具から発生する化学物質、あるいは生活の中で生じる汚染物質が室内に滞留しやすくなり、シックハウス症候群のリスクを高める要因となります。
換気不足
高気密住宅が増える中で、計画的な換気がおろそかになると、室内の空気質は急速に悪化します。窓を開けるだけの自然換気では、十分な換気量を確保できないことが多く、室内の汚染物質が滞留してしまいます。特に、化学物質は目に見えないため、換気不足の状態が続くと、知らず知らずのうちに健康被害を引き起こす濃度に達してしまうことがあります。
カビやダニ、ハウスダスト
化学物質だけでなく、カビ、ダニ、そしてそれらの死骸や糞、花粉、ペットのフケなどが混じり合ったハウスダストもシックハウス症候群の大きな原因となります。これらはアレルギー症状を引き起こし、ぜんそくやアトピー性皮膚炎の悪化、鼻炎、結膜炎などの症状を引き起こします。特に、高温多湿の環境はカビやダニの増殖に適しているため、梅雨時や夏場は注意が必要です。結露しやすい窓際や北側の部屋、水回りなどは、カビが発生しやすい場所として知られています。
シックハウス症候群の対処方法
シックハウス症候群が疑われる場合、症状の軽減と根本的な解決のために、以下の対処法を試してみてください。
一時的な対処法
まずは、今すぐにできる応急的な対策で、症状を和らげることが重要です。
1.徹底的な換気
最も手軽で効果的な応急処置は、こまめな換気です。窓を2箇所以上開けて空気の通り道を作り、定期的に部屋の空気を入れ替えましょう。短時間でも良いので、朝晩だけでなく、日中も数回換気を行うことで、室内の化学物質濃度を下げることができます。可能であれば、対角線上の窓を開けると効率的です。
2.化学物質の持ち込みを減らす
室内に持ち込むものにも注意が必要です。新しい家具やカーテン、カーペットなどは、購入後すぐに使用せず、数日間風通しの良い場所で陰干ししてから室内に取り入れることで、初期の化学物質放散量を減らすことができます。また、芳香剤や消臭剤、殺虫剤なども化学物質を含むため、使用を控えるか、自然素材のものを選ぶようにしましょう。
3.こまめな掃除と湿度管理
カビやダニ、ハウスダスト対策としては、掃除と湿度管理が不可欠です。部屋のなかのものはなるべく収納して、床を日常的にクイックルワイパーなど手軽に掃除できるものを使ってきれいにしてください。特に、寝具はダニの温床になりやすいため、こまめな洗濯と乾燥が重要です。室内の湿度は50~60%を目安に保つように心がけ、加湿器の使いすぎには注意し、除湿器やエアコンのドライ機能も活用しましょう。
4.サーキュレーターや空気清浄機の活用
部屋の空気を循環させるためにサーキュレーターを活用するのも有効です。窓を開けて換気をする際に、サーキュレーターを窓の外に向けて設置することで、室内の空気を効率的に排出できます。また、空気清浄機は、花粉やハウスダスト、一部の化学物質を除去する効果が期待できますが、根本的な解決にはなりません。換気と合わせて補助的に利用するのが良いでしょう。
根本的な対処法
一時的な対処法で症状が改善しない場合や、より長期的な解決を目指す場合は、住宅そのものの環境を見直す必要があります。
1.高気密住宅に計画的換気をおこなう
シックハウス症候群の根本的な解決には、高気密住宅における計画的な換気が不可欠です。高気密住宅は、外部からの不要な空気の流入を防ぎ、室内の温度を一定に保つことに優れていますが、同時に空気の滞留を招きやすい側面もあります。そのため、部屋ごとの換気をおこなうこと。そのほか機械換気システムを導入し、24時間365日、常に新鮮な空気を室内に取り入れ、汚れた空気を排出する仕組みを構築することも可能です。これにより、化学物質の滞留を防ぎ、カビやダニの発生を抑制し、快適で健康的な室内環境を維持できます。
2.高断熱・高気密な住宅に改修する
既存の住宅でシックハウス症候群の症状に悩まされている場合、高断熱・高気密な住宅への改修を検討するのも有効な選択肢です。断熱性能を高めることで、室内の温度差が少なくなり、結露の発生を抑えることができます。これはカビの繁殖を抑制する上で非常に重要です。また、高気密化と合わせて、前述の部屋ごとの換気、そのほか計画的な換気システムを導入することで、室内の空気質を大幅に改善し、シックハウス症候群のリスクを根本から低減することが期待できます。専門家と相談し、住宅の状況に応じた改修プランを検討しましょう。
シックハウス症候群に関してよくある質問
Q.シックハウス症候群の初期症状は?
初期症状としては、目のチカチカや鼻のムズムズ、喉のイガイガなどの刺激感が挙げられます。また、頭痛や倦怠感、めまいなど、風邪に似た症状や、精神的な不調として現れることもあります。
Q.シックハウス症候群はどのくらいの期間続きますか?
症状の期間は個人差が大きく、原因物質との接触が続けば長期化する可能性があります。環境改善を行えば比較的早く症状が和らぐこともありますが、重症化すると数ヶ月から数年にわたって症状が続くケースもあります。
Q.カビが生えている部屋で寝るとどうなりますか?
カビが生えている部屋で寝ると、カビの胞子を吸い込むことでアレルギー性鼻炎、喘息、皮膚炎などのアレルギー症状が悪化したり、呼吸器系の感染症を引き起こすリスクが高まります。
Q.古い家に住むとシックハウス症候群になる原因は何ですか?
古い家の場合、断熱性や気密性が低く、結露が発生しやすい環境であればカビやダニが繁殖しやすくなります。また、過去に使用された建材からアスベストなどが飛散する可能性もゼロではありません。さらに、改修の際に新たに持ち込まれた建材が原因となることもあります。
まとめ
シックハウス症候群は、住まいの環境が原因で起こる健康問題であり、その解決には原因を特定し、適切な対策を講じることが重要です。まずは、こまめな換気や掃除、湿度管理といった一時的な対処法で症状の軽減を図りましょう。そして、より根本的な解決を目指すのであれば、高気密・高断熱な住宅における部屋ごとの換気や、計画的な換気システムの導入や改修を検討することをおすすめします。健康で快適な住環境は、心身の健康を保つ上で不可欠です。この情報が、あなたの健康な暮らしを取り戻す一助となれば幸いです。
シックハウス症候群かも、とお悩みの方は、ぜひ下記のお問い合わせフォームよりお気軽にご連絡ください。「一度、家の状態を見てほしい」とお問合せいただければ、まずは現在の住まいや建物の状態を調査いたします。